プロローグ
香川県出身。1984年美大卒後、渡欧。
92年、スペインの小村で無一文からの生活を始める。
家具工場に勤めながら、木工芸品造り、教会修復、オリーブ収穫、左官、大工、看板描きなどに従事。
8年間、美術界から離れ、独自の表現を模索。
2001年、すべての仕事を辞め、作品発表を開始。
主要な現代美術賞を次々と受賞。
2008年、スペイン最大の現代美術賞「BMW賞」を受賞。
『BMW絵画賞』毎年約千人の中から一人選ばれるヨーロッパで最も重要な現代美術賞のひとつです。
副賞は欧州最高額、授賞式はマドリード国立音楽堂でスペイン王妃により褒章を授与されます。ブログBMW賞参照
2013年、世界中から応募の「フォーカス国際芸術賞(セビーリャ)」で大賞を受賞。
2014年、最も歴史の長い「秋の現代美術展(マドリード)」で最高賞。
2012年の「バルデペニャス国際現代美術展大賞」と併せて、スペイン四大現代美術賞全てでのグランプリ受賞。
2020年には、ソフィア王妃美術賞ファイナリストに選出されました。
受賞回数は、50超。
いずれも、プロのみ約千点のエントリー、3%以下の入選という狭き門です。
日本の公募展と違い、入選するだけでも大変で、受賞は一点か二点だけなので、安藤さんような例は珍しい。
受賞作は、美術館に買い上げ収蔵。
公募展エントリーは無料で、受賞後も絵で食べていけるよう支援してくれます。
スペインでは、作家ファーストが、きちんと機能しているといえるかもしれません。
現在、安藤さんの作品は、世界60余の美術館に収蔵されています。
本人は、名誉とは関係なく仕事をしたいので、2013年スペイン王立芸術科学歴史アカデミー客員に任命された際、勲章を返却。
奥様で美術家のラフエンテさんと二人の子供達が、「父は、勲章を胸につけて、誇らしそうにふるまうとか、、、ないない。」と、笑っていたのが印象的でした。(余談として、奥様も多くの受賞歴を持つスペイン抽象絵画の著名な作家です、子供達も医療、情報科学でそれぞれスペインの第一人者として活躍されています。)
安藤さんの家族からは、「偉そうな肩書のある人とは、付き合わないようにすると、たいてい人生うまくいきますよ。」と助言してくれました。
日本からのオファーは、頑なに断り続けています。
画伯とか先生とか、持ち上げられるのが嫌で、日本を離れたのだから、当たり前かもしれません。
制作風景を少しのぞいてみましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
門をくぐると日本の楓が迎えてくれる。
家を抜けると、マグノリアのある中庭の向こうにアトリエ。
ガラス張りなのでどちらからもよく見える。
家族や友人が自由にアトリエに入ってくる。
アトリエに入ったら、制作中の絵に何かひとこと言うのが、この家のルール。
絵で生きると決めた時、一つだけ自分に課したことがあるそうで。
それは、走ること。
25年間、延々と続くオリーブ畑の道を、毎日6キロ前後走っている。
お酒とたばこは、子供が生まれた時にやめた。
家事は男、が当たり前の国なので、
「本職は主夫業です。家事の合間に絵を描いています。」と笑っている、、、
来客は多い。
画伯に教えを乞う、という要件の人は一人もいない。
その逆で、いろいろなことを安藤さんに教えるのが楽しいらしい。
怪我をしない走り方や健康に関することはもちろん、
溶接や左官のコツ、料理や旅行のアドバイス。
子供たちは、ゲームを一所懸命に教えている。
村のみなさんが、安藤さんを大切にされているのがよく伝わってきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
スペインの小さな村、
質素な生活の中で作品が生まれる過程を、
少しだけ覗かせてもらったブログです。
ーー 追記「日本の地方美術界の問題について」 ーー
日本は未だに、実力よりも権威の国。
若い美術家は、制作以前の問題で心が折れてしまいます。
「上の言うことを聞かなければ、潰される。」ようなことが、今も昔も、平気で行われています。
安藤さんも、制作に集中したいので、故郷(香川県)を離れなければいけませんでした。
美術評論家マリン・メディナ氏の指摘を掲載させていただきます。
『・・・さて日本には、勲章や賞を買収する美術家が未だに存在しているのは残念なことですね。
勲章をもらうために、あの手この手でコネづくり。賄賂を払って、勲章を手に入れることが生きがいのようです。
作品が素晴らしければまだしも、中味のない綺麗なだけの絵画や立体作品は、媚が見え透いて気持ち悪いだけです。
地元では世界的大先生、国際的には三流、ばかばかしいと思いませんか。
権威に近づいて名誉を得ようとする美術家を、正しく批判するメディアが育つことも大切です。
無価値な作品を設置される公共施設、無駄に使われる税金、無責任な迎合主義、繰り返される悪循環。
これら勲章好きの画伯先生が築き上げた人脈と賄賂の壁に、多くの若い才能が潰され続けています。
これは『犯罪』だということを日本の関係者は、はっきり自覚すべきだと思います。
権威を翳す肩書に騙される人が、日本に多いのはなぜでしょうか。
それは、美術作品の価値基準が曖昧で、日本国内でしか通用しない美術市場がまかり通っているからです。
メディアを通して、画商に都合のいい情報に洗脳されている人が多すぎるのも一因でしょう。
世界では、肩書無しの現代美術家が一軍、勲章や肩書の多い洋画家や日本画家等は二軍以下という価値基準がはっきりしています。
才能よりも人脈や派閥を重んじる日本の社会構造のせいで、作家も、それを支えるコレクターやキュレーターも育ちにくい環境にあります。
組織の論理が改善されていないのは、先進国では日本だけになってしまいました。
日本にしか存在しない美術団体や画壇という仕組みが、はやく無くなる日が来るといいですね。
2010年記』
最後に同評論家の安藤評もついでに、
『・・・面白い日本人が居ると、評論家仲間から教えられ、ラ・マンチャの小さな村で安藤と会ったのはずいぶん前のことです。
彼の中に「敗れると分かっていても、信念を貫く」ドン・キホーテが住んでいることは、すぐに分かりました。
それを私たちは、「高貴な精神」と呼んでいます・・・2010年個展カタログ』
92年、スペインの小村で無一文からの生活を始める。
家具工場に勤めながら、木工芸品造り、教会修復、オリーブ収穫、左官、大工、看板描きなどに従事。
8年間、美術界から離れ、独自の表現を模索。
2001年、すべての仕事を辞め、作品発表を開始。
主要な現代美術賞を次々と受賞。
2008年、スペイン最大の現代美術賞「BMW賞」を受賞。
『BMW絵画賞』毎年約千人の中から一人選ばれるヨーロッパで最も重要な現代美術賞のひとつです。
副賞は欧州最高額、授賞式はマドリード国立音楽堂でスペイン王妃により褒章を授与されます。ブログBMW賞参照
2013年、世界中から応募の「フォーカス国際芸術賞(セビーリャ)」で大賞を受賞。
2014年、最も歴史の長い「秋の現代美術展(マドリード)」で最高賞。
2012年の「バルデペニャス国際現代美術展大賞」と併せて、スペイン四大現代美術賞全てでのグランプリ受賞。
2020年には、ソフィア王妃美術賞ファイナリストに選出されました。
受賞回数は、50超。
いずれも、プロのみ約千点のエントリー、3%以下の入選という狭き門です。
日本の公募展と違い、入選するだけでも大変で、受賞は一点か二点だけなので、安藤さんような例は珍しい。
受賞作は、美術館に買い上げ収蔵。
公募展エントリーは無料で、受賞後も絵で食べていけるよう支援してくれます。
スペインでは、作家ファーストが、きちんと機能しているといえるかもしれません。
現在、安藤さんの作品は、世界60余の美術館に収蔵されています。
本人は、名誉とは関係なく仕事をしたいので、2013年スペイン王立芸術科学歴史アカデミー客員に任命された際、勲章を返却。
奥様で美術家のラフエンテさんと二人の子供達が、「父は、勲章を胸につけて、誇らしそうにふるまうとか、、、ないない。」と、笑っていたのが印象的でした。(余談として、奥様も多くの受賞歴を持つスペイン抽象絵画の著名な作家です、子供達も医療、情報科学でそれぞれスペインの第一人者として活躍されています。)
安藤さんの家族からは、「偉そうな肩書のある人とは、付き合わないようにすると、たいてい人生うまくいきますよ。」と助言してくれました。
日本からのオファーは、頑なに断り続けています。
画伯とか先生とか、持ち上げられるのが嫌で、日本を離れたのだから、当たり前かもしれません。
制作風景を少しのぞいてみましょう。
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門をくぐると日本の楓が迎えてくれる。
家を抜けると、マグノリアのある中庭の向こうにアトリエ。
ガラス張りなのでどちらからもよく見える。
家族や友人が自由にアトリエに入ってくる。
アトリエに入ったら、制作中の絵に何かひとこと言うのが、この家のルール。
絵で生きると決めた時、一つだけ自分に課したことがあるそうで。
それは、走ること。
25年間、延々と続くオリーブ畑の道を、毎日6キロ前後走っている。
お酒とたばこは、子供が生まれた時にやめた。
家事は男、が当たり前の国なので、
「本職は主夫業です。家事の合間に絵を描いています。」と笑っている、、、
来客は多い。
画伯に教えを乞う、という要件の人は一人もいない。
その逆で、いろいろなことを安藤さんに教えるのが楽しいらしい。
怪我をしない走り方や健康に関することはもちろん、
溶接や左官のコツ、料理や旅行のアドバイス。
子供たちは、ゲームを一所懸命に教えている。
村のみなさんが、安藤さんを大切にされているのがよく伝わってきます。
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スペインの小さな村、
質素な生活の中で作品が生まれる過程を、
少しだけ覗かせてもらったブログです。
ーー 追記「日本の地方美術界の問題について」 ーー
日本は未だに、実力よりも権威の国。
若い美術家は、制作以前の問題で心が折れてしまいます。
「上の言うことを聞かなければ、潰される。」ようなことが、今も昔も、平気で行われています。
安藤さんも、制作に集中したいので、故郷(香川県)を離れなければいけませんでした。
美術評論家マリン・メディナ氏の指摘を掲載させていただきます。
『・・・さて日本には、勲章や賞を買収する美術家が未だに存在しているのは残念なことですね。
勲章をもらうために、あの手この手でコネづくり。賄賂を払って、勲章を手に入れることが生きがいのようです。
作品が素晴らしければまだしも、中味のない綺麗なだけの絵画や立体作品は、媚が見え透いて気持ち悪いだけです。
地元では世界的大先生、国際的には三流、ばかばかしいと思いませんか。
権威に近づいて名誉を得ようとする美術家を、正しく批判するメディアが育つことも大切です。
無価値な作品を設置される公共施設、無駄に使われる税金、無責任な迎合主義、繰り返される悪循環。
これら勲章好きの画伯先生が築き上げた人脈と賄賂の壁に、多くの若い才能が潰され続けています。
これは『犯罪』だということを日本の関係者は、はっきり自覚すべきだと思います。
権威を翳す肩書に騙される人が、日本に多いのはなぜでしょうか。
それは、美術作品の価値基準が曖昧で、日本国内でしか通用しない美術市場がまかり通っているからです。
メディアを通して、画商に都合のいい情報に洗脳されている人が多すぎるのも一因でしょう。
世界では、肩書無しの現代美術家が一軍、勲章や肩書の多い洋画家や日本画家等は二軍以下という価値基準がはっきりしています。
才能よりも人脈や派閥を重んじる日本の社会構造のせいで、作家も、それを支えるコレクターやキュレーターも育ちにくい環境にあります。
組織の論理が改善されていないのは、先進国では日本だけになってしまいました。
日本にしか存在しない美術団体や画壇という仕組みが、はやく無くなる日が来るといいですね。
2010年記』
最後に同評論家の安藤評もついでに、
『・・・面白い日本人が居ると、評論家仲間から教えられ、ラ・マンチャの小さな村で安藤と会ったのはずいぶん前のことです。
彼の中に「敗れると分かっていても、信念を貫く」ドン・キホーテが住んでいることは、すぐに分かりました。
それを私たちは、「高貴な精神」と呼んでいます・・・2010年個展カタログ』
©2008- Equipo ArTe & Zurubarán