世界に名だたる小説『ドン・キホーテ』の作者セルバンテスの生地、アルカラ・デ・エナレス。 首都マドリッドからバスでも電車でも所要わずか30分という短さで、気軽に訪れることが出来る学問の町です。 町の歴史は古くローマ時代までさかのぼりますが、世界遺産に登録されるに至ったこの町の魅力は、15世紀末から花開いた学問を抜きにして語れません。シスネロス枢機卿の発案で創設されたアルカラ大学は、初めは聖職者教育のために宗教や神学が中心でしたが、やがて文学や美術、法学、医学などの研究も盛んになっていきます。その後、一度はマドリッドに移転しますが(それが現在スペインの最高学府とも言える、コンプルテンセ大学)、再びアルカラの町に大学が創られ、かつての学問の町としての繁栄を復興させようとの運動の中で、1998年に大学とその周辺の歴史地区が世界遺産に登録されました。 大学を中心に発展していくなかで、文豪セルバンテスもこの町で生まれます。町の目抜き通り、マジョール通りにセルバンテスの家が再現されています。幼少期をここで過ごしたセルバンテスも、きっと大学都市として発展していく町の様子を目にしたことでしょう。 また、スペイン語圏で最高の文学賞と言われるセルバンテス賞の授賞式は、毎年スペイン国王、首相出席のもと、アルカラ大学の大講堂内で行われます。その名の通り作家セルバンテスにちなんで創設された文学賞で、スペイン語圏のノーベル文学賞に値する名誉ある賞です。スペインにとって、この町は文学の代名詞と言っても過言ではないかも知れないですね。 さらに、イサベル女王の援助により新大陸発見を成し遂げたコロンブスが初めて彼女に謁見した大司教館やバロック様式の修道院、中世の面影を残すマジョール通りの散策…など、町の見どころは学問だけに限りません。 大都会マドリッドの喧騒からしばし逃れ、ゆっくりと流れる時間の中で中世の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。 (c) 2009 Ciudades Patrimonio de la Humanidad de España |